第29話 夜の音

夜の音
2月
叫
移る
午後
ふりかえってみて

夜の小さな雑音が怖い。足音、カラカラと点滴棒を引く滑車の音、洗面所にある洗濯機の稼働音。

離れた所の音がどんどん迫ってくる感覚で布団を被り耳を塞ぎ動悸に耐える。

原因は、復学など少し先の事すら予測できない不安が夜になると現れると自己判断。

ある夜、いつものように頭から布団を被っていると、ひとくんの叫び声。

普段、他の部屋の患者の声が聞こえてくることはなく一気に騒々しくなり、人の行き交う足音、ガラガラとベッドかストレッチャー音が響き数分後には何もなかったように静かな向こう側。

翌日看護師さんからひとくんが転院したと聞き、手紙を書きます。いつからか夜の音は怖くなくなりました。