ICUの看護師さんたち

ICUは常に明るく昼夜の区別がつかない。ベッド周りは9時消灯。 朝6時ごろベット周りの電気がつく。「今朝、都心でも雪積もりましたよ」と看護師さんの言葉で、また次の日が来た事 と外の世界があることを知る。「今日の日付けは」と聞かれて、機械的に答えるだ けで季節の感覚はない。間違えると正しい日にちを教えてもらい、次から間違えな いように忘れないように復唱する。もう少しで4月。

ここ2日、同じ看護師さんにオムツを取り替えてもらっている。 2人の子どもを保育園に預けてから出勤してくるのでこの時刻になると。 「今日は下の子が泣いてぐずって大変でした」と聞き「親が行ってしまえば諦めて 泣き止みますよ。」とそんな言葉がでた。「そうらしいです!保育士さんが同じこ と言っていました。母親の姿が見えなくなるとケロッとしてお兄ちゃんと遊んでいるって!」

保育園では主に地域で子育てをしている母親、園利用者の保護者、子どもを遊ばせながら話に耳を傾ける、そんな得難い仕事をさせてもらっていた。 一方で自分の対応に問題がなかったのかという気持ちを自宅まで持ち帰る毎日。 そしてあの親子はどうしているのかとこんな所で思い出す。

「背中ほぐしましょう」と看護師さんが背中をマッサージしてくれる。「学生時代 サッカーをしていたのでスポーツトレーナーになりたかったんです。ただその学校 が授業料が高くて、たまたま都立の看護学校が受かったから学費も安いし親に負担 かけたくないので看護師になったんです。」と話してくれて、なんて親思いな看護師さんなんだろうと背中がほぐれ心も身体も温まる。

こちらから聞いたわけではなく「自分は長崎出身なんです。」と看護師さんが処置 をしながら話してくれた。 友人が福山雅治のコンサートに毎年行っていると話すと「それなら稲佐山おすすめ です。いい所なのでご友人とぜひ」と。 高校の修学旅行は長崎だったけれど白血病で入院していたので行けなかった。 退院したら長崎行こうかなと思った。

術後何日か過ぎ、身動きしない方が身体は楽だけど、このような会話のやりとりから日常へ戻っていくのだと感じる。